◎子どもの予防と高齢者の予防は健康の基本
杉浦 昔の学校の歯科検診は虫歯の有り、無ししかなかったんですが、名古屋市の最近の検診では、虫歯はもちろん顎関節や歯肉(歯茎)の状態など、検査項目が細かくなっています。それがすなわち予防とはつながらないかもしれませんが、少しでも悪くなる前に受診しようと思うきっかけにはなるでしょう。子どもの時にしっかり予防を身につけていれば、大人になっても予防が当たり前になりますから。
原田 歯科疾患実態調査(国勢調査)ですが、歯の残っている本数はどんどん増えていて、虫歯の本数は減ってきていてと、良い傾向にはありますが、やっぱりヨーロッパなどの予防先進国に比べたら、経済的な先進国である日本はまだまだです。私たち歯科医師が、もっと予防歯科に取り組んでいくことが必要だと思います。
古田 そうですね。歯科医師含め日本人の歯に関する考え方をシフトしていく必要があると思います。例えば、虫歯があるなど絶対必要な治療はしなければいけないけれど、見た目だけのために歯を削るのは非常にもったいないことである、という認識を持ってほしいものです。
杉浦 私の医院には、地域柄高齢の方がたくさんいらっしゃるんですけど、やっぱり元気な方は歯があります。そういう方は若い時から継続的に歯科医院でメンテナンスを受けてこられています。
原田 たしかに、高齢の方に対しては、しっかり噛める歯と口腔を清潔に保つことで、高齢者の死亡原因の第1位である肺炎を、約50%減らしたという研究報告もあるんです。このように全身との関わりを考えた口腔医としての位置づけを認識して、我々も勉強していかないといけないですよね。
古田 そのとおりだと思います。歯は1本で機能するものではなく、他の歯、筋肉、神経、骨などと協調しあって本来の機能を発揮します。歯科治療はとても繊細で、安全で健康的に行わなければなりません。歯科医師として、これからも患者さんの病気の原因が何なのかを正しく診断する目と、問題を解決し将来的にも長く機能する口腔を取り戻す技術力を研鑽しながら、患者さんへの予防の啓蒙も根気強く続けていかなくてはなりません。大学院で私たち3人が身につけた「病理学の知識」、そして「患者さんの歯を守りたい」という志を大切にして、歯科医師として躍進し続けていきたいですね。