非抜歯矯正治療症例集-7-
●多くの歯が埋伏しているケース
本来、生えてくるはずの犬歯や小臼歯が生えてこなくて、骨の中に埋まっていたケースです。このような場合も、埋まっている歯が悪いわけではなく、埋もれてしまった原因を考えるべきです。もし、この場合、埋もれている犬歯や小臼歯を抜くと、歯を並べること自体は簡単になりますが、上下の歯の位置関係は全然合わなくなります。結果的に、咬み合わせ不良により他の歯も早期に失ってしまう恐れがあります。下アゴに埋もれていた親知らずは、手前の歯を強く押し出しています。他の歯が生えてくる余地をさらに狭くする原因になっていますので、下アゴの親知らず抜いています。また、咬み合わせのタイプとしては、上顎前突も伴っていました。アゴの動きに合わせて積極的に咬み合わせ面を正しい角度にしていくことにより、上下の位置も良好になります。埋伏している歯を矯正治療により生かすことは、長い目で見て非常に有効な手段です。
その他にも、いろいろな歯並びや咬み合わせがあります。
いかがでしたでしょうか? どんな歯並びの矯正治療においても大切なことは、原因がわかれば、その原因を取り除くことにより、本来の歯の機能を発揮させる治療が可能となる点です。原因を探らずにどんなにがんばって治そうとしても、その症状を消すための努力をしているにすぎません。それは、健康な歯を失うことにもつながりかねません。
ゴムメタル
倒れた歯を立て直す
ワイヤー
原因がわかれば、その原因を取り除くことが治療を成功させる近道です。前述したケースの多くが、親知らずが原因の1つになっており、奥歯が倒れてきたことによって歯並びや咬み合わせが悪くなっています。実際の治療の際には、倒れた歯を立て直すには、独り1 人にあうように複雑にワイヤーを曲げていきます。また、最近では、永久変形しない特殊な新チタン合金が開発され、矯正用ワイヤーに応用されています。このワイヤーは、やわらかく、しなやかでありながら高強度で腰が強いという特性をもっており、また加工硬化しにくいので折れにくい金属です。このような技術の進歩により、少しずつ複雑なワイヤーを曲げていかなくとも、オーダーメイドな矯正治療ができるようになってきました。しかし、既製品ワイヤーをそのまま使用しても正確に歯を動かすことはできませんので、やはり1人1人に合ったワイヤーを準備する必要があります。新開発されたワイヤーは、生体安全性も証明されており、人にやさしい合金です。決してゴムではありませんが、金属でありながら、ゴムのような性質をもつ不思議な合金ということから『ゴムメタル』と名付けられました。