◆ 上顎前突
現代人には、上顎前突、いわゆる出っ歯が増えてきているといわれています。ヨーロッパの統計でも、1920 年代は10%強の発現率だったのが、1990 年代では、40~50%にまで増加しています。
日本人においても、上顎前突が増えている傾向があるようです。しかし、この上顎前突という分類は、見た目での分類で、機能的な分類ではありません。上顎前突には大きく分けて2つの種類があります。
1.上アゴの前歯が出ている場合
2.下アゴが後ろに下がっていて、上アゴの前歯が出て見える場合
そして、国民の少なくとも4人に1人は、成長期を通じて出っ歯の中でも、下アゴが後退している【2】のタイプの不正咬合が発現し、問題が多い咬み合わせであるといわれているのです。なぜ、その不正咬合は問題となるのでしょう? それは、下アゴが
後退しているタイプの不正咬合は、アゴの関節に不調をきたす確率が高いからです。2人の横から撮影した写真を見てください。どちらの方も来院されたときには、「出っ歯」が気になるといって、治療を希望されていました。横から見ると、たしかに上の前歯の方が下の歯に比べて出ているように見えます。ここで矯正歯科でよくいわれることは、2人とも同じです。上の前歯を中へ入れるために、歯を抜いて引っ込めましょう。はたして、この2人の矯正治療は同じ方向性で治せるのでしょうか?