◎なくなったら元に戻らない、戻せない
私自身、歯学部の学生の頃、矯正専門医から「健康な歯を抜くように」といわれた経験があります。私は歯並びがデコボコだったので、頭の中では抜かなければいけないのかなと思っていましたが、ごく簡単な検査・診断の結果、「抜く」といわれたことに大きな疑問をもちました。その後、まったく違う理論・手法で、私は健康な歯を抜くことなく矯正治療を受けることができまた。その方法は、日本ではまだ少ない特殊な矯正治療法でした。しかし、私自身の歯並びがガタガタで咬み合わせも悪かったおかげで、さまざまな矯正理論を見直し、実体験として勉強することができたことは、非常に大きな財産となっています。そして、歯科医となって現在に至るまで、一貫して、健康な歯を抜く矯正治療は行っていません。
矯正治療は、デコボコに並んでいる歯をキレイに並べる、飛び出している歯を引っ込めるなど、一般的には「歯並びをキレイにする」イメージがありますよね。
「矯正」とは、悪いものを正しく改める、直す、という意味ですが、どんな手段でもキレイになればいいのではありません。
もう一度、大切なことをいいます。
歯は一度抜いたり、削ったりして無くなるともう元には戻せません。初めはなんとなくでも構いません。「自分の歯」1本1本は、代わりのない大切なものだということを理解していただけると幸いです。