削る前に見ておきたい ほんとうに美しいあなたのその歯-1-
右が銀歯を入れるために削るダイヤモンドバー 左が人工用ダイヤモンドバー
◎最小限の治療が歯科の真髄
私は大学院で病理学を専攻していました。口の中の病気を顕微鏡レベル、遺伝子レベルで探る学問です。そのときに見た歯の結晶は感動的に美しいものでした。こんな美しいものが人間の身体の中にあるのか!!という驚き。それぐらいきれいなものなのです。歯はとても硬いものなので、効率的に削る道具がなかった昔は苦労して削っていたそうです。しかし今は、歯を簡単に削れる道具があります。これは患者さんにも、歯医者として自分にもいい聞かせたいことなのですが、何でも削れる道具があると、歯を削ることへの意識が麻痺してしまうんですね。歯を削る道具には天然の物質の中で一番硬いダイヤモンドが先端についています。ほんとうにそれを使う必要があるか(歯を削る必要があるのか)、歯医者は一度立ち返って考えなければいけないと思います。
虫歯になれば自然治癒することはないので、侵された部分を取るしかないのですが、それだって最小限にしていかなければいけません。これは国際歯科連盟(FDI)が提唱しているMI(ミニマル・インターベンション=最小限の侵襲)に基づく考え方で、日本でも定着しつつある歯科治療における指針となる概念です。これは今後もっと考えていかなければいけないことだと思います。