◎「通院3回でキレイな歯並び」 そのコピーを信じますか?
歯並びの治療を始めようと決心したとき、最も大事なのは「どんな治療を選ぶか」です。矯正治療や歯並び治療の看板を掲げていても、その方法はさまざまです。
「通院3回でキレイな歯並び」は、審美歯科を併設している美容外科や、美容を謳っている歯科医院でよく見かけるキャッチコピーです。ほんとうに3回で、でこぼこの歯並びがキレイになるんです。見た目はほんとうに。
でも実際、そこで何をしているのかを知る人は少ないと思います。この本の冒頭、「はじめに」でもお話しましたが、私が以前アルバイトをした審美歯科での施術について具体的にお話しようと思います。
審美治療ではまず、麻酔をします。何のためにするのかというと、痛みを感じないようにするためです。おわかりでしょうか? 虫歯でもなんでもない健康な歯に対して、痛いことをするから麻酔をするのです。麻酔は前歯の近くの歯肉に行います。そうすると感覚がなくなり、歯を触られても感じなくなってきます。歯はエナメル質を削っても痛くはありませんが、そのすぐ下の象牙質を削ると痛みを感じます。さらに奥の神経のあるところ(歯髄)に触れると激痛が走ります。
私が触ろうとしていたのは虫歯でも何でもない、健康な歯の神経です。それを取る必要があったから麻酔をしたのです。さらにもう1つ、大きな理由があります。それは飛び出た犬歯を抜くためです。歯を抜くというのは、歯ぐきのさらに中のほうの骨に植わっている歯の根っこを骨から引き離すことです。
犬歯は人間の歯の中では一番長い歯で、強力な力で骨の中についています。しかし、完全に一体になっているのではなく、歯根膜というクッションになる組織を介して骨がついています。歯を抜くというのは、その歯根膜をはがすことです。健康な犬歯を抜くのには、非常に強力な力が必要です。