◎「Eライン」という日本人にとって不可解な基準
Eラインは1954年、矯正医のRobert・M・Ricketts が提唱した基準で、正式名称はAesthetic Line(エステティック・ライン)といいます。Eラインは、横から顔を見て、鼻とアゴの先端を結んだ線のこと。Eラインより若干唇の先が引っ込んでいる位
置が見た目に優れているといっています。日本の矯正医たちの多くは、この基準にならって口元を決めています。ですから、唇がEラインより飛び出ているとき、歯を抜かないとこの基準を満たせないと診断します。実際、健康な歯を抜いて矯正することが多いのはその基準のためもあります。
私は、唇のように大きく動くところが、はたして正しい歯並びや咬み合わせの、特に歯を抜くか抜かないかの基準になり得るか疑問をもっています。怒っている人やいつも不満を訴えている人の唇はとがっているでしょう? 同じ人でも微笑んでいるときは口角が上がり、唇の位置は引っ込んでいる気がします。
また、Eラインの基準が日本人に当てはめにくいのは、鼻の先端と下アゴの先端を基準としているところです。このラインより唇が飛び出していれば抜歯という、厳しい診断にもなり得るこの基準を考え出したのは、日本人ではなくアメリカ人です。