おわりに -1-

hatto136一生、歯を守る「予防歯科」。その大切さ、またその大切さをどのように
患者さんに伝えるべきかなど、著者三人が本音を語る。
 
 
◎予防歯科の重要性をいかに患者さんに理解してもらうかが課題
 
 
杉浦 患者さんのために「痛くない」「ひどくなる前に治療しよう」と考えた場合、最終的に行き着くのは予防ですよね。
 
古田 そうですね。エナメル質などの歯の切片を顕微鏡で見ると神秘的な構造をしていることに気がついて、どうしても歯が削れなくなるんですよ。それは学生時代に見たんですが、見て本当によかったと思っています。
 
原田 天然歯の美しさはもちろん、機能面も大切にしたいと思います。私は普段インプラントや歯周外科の再生医療を行っていますが、まず病気を逆から考えていくようにしています。この患者さんはどういう経緯でこの病気になったのか、その原因を突き止めて、これからどのようにして組織を再生していくか、治療をしていくかを考えます。この考え方は、病理学で培った基礎研究がすごく影響していますね。
 
杉浦 高度先進医療でもそうなんですね。
 
原田 現在の高度先進医療をもってしても、歯を完全に元には戻すことはできません。治療というのは、結局はリハビリテーションなんです。
 
古田 そうですね。よくできたインプラントや入れ歯は、天然歯と見た目にそれとなく近づけることができますし、咀嚼力もある程度までは回復できます。しかし、100%天然歯と同じ美しさ、噛む機能を取り戻せるわけではないですからね。
 
杉浦 やはり、天然歯に勝るものはありませんよね。
 
原田 予防には1次予防、2次予防、3次予防の三種類の概念があります。2次予防の「早期発見・早期治療」も大事ですが、古田先生が専門としている矯正は1次予防で「病気そのものをいかに起きないようにするか」ということなんです。虫歯や歯周病が起きにくい、力の分散を考えた噛み合わせなど、矯正による良い口腔内の環境づくりは究極の予防ですよね。
 
古田 矯正できちんと機能を伴った健康的な歯並びにすることで、歯の寿命を長くして噛む機能を高め、全身状態の向上はもちろん、その人が本来持っていた表情や顔が蘇りますから、審美性の面でも患者さんにはメリットが大きい治療だと思います。
 
原田 古田先生、そうなんですね。きれいな歯並びは明るい表情をつくり出しますから、その方の人生がとても豊かになるんでしょうね。予防歯科を専門にしている杉浦先生は最前線の中で、何か感じることはありますか?
 
杉浦 私の医院のある地域では、予防歯科がだいぶん浸透してきていて、問診票の主訴に「予防歯科を始めたい」と記入する患者さんが最近増えてきました。患者さんのその言葉を見ると私も「予防歯科を啓蒙してきてよかった」と思います。最初は患者さんも「予防歯科って何ですか?」といった感じでしたが、各年代ごとに説明の仕方を工夫して重要性を伝えるようにしてきました。
 
原田 なるほど、素晴らしいことですね。さらに踏み込んで、例えばいい入れ歯ができて、噛み合わせが良くなれば、食事もきちんと取れるようになる、そうなれば栄養がきちんと摂れて全身の健康につながるという一連のことを、伝えていきたいですね。「お口の中の健康から全身の健康へ」と結びつける最初の出発点が「予防歯科」の大切な責任だと思います。
 
杉浦 大学院を卒業する時、教授に「口腔医になりなさい」と言われました。あとは「患者さんを家族だと思いなさい」とも。古田先生、原田先生覚えていますか?
 
古田 よく覚えていますよ。どちらも歯科医師の心得として大切なことですよね。
 
原田 私もそう思います。あとは、亀山教授からご指導いただいた研究は大変だったけれど「忍耐」する重要性をいろいろな意味で体得しました。また、科学的、客観的に物事をみて「論理的に考えること」も大学院で学んだ大きな財産です。
 
杉浦 原田先生のおっしゃったことに加えて、「一つのことを粘り強くやりぬく精神」も身につきました。その忍耐力と精神力が、今の臨床の現場にも生きてますよね。歯科は「ヒト対ヒト」、なかなかこちらの意見が患者さんに伝わらない場合も、ご理解いただくまで粘り強く説明しなくてはいけませんから。
 
古田 そういえば大学院時代の亀山教授は、正月の三が日返上で私たちを指導してくれていましたよね。「教えることには忍耐強さが必要」だと、体現して教えていただいたように思います。
 
 
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